彼のコンサートを聴くのは3回目かな。中学の頃から知っているので、以前は身内感覚で「大丈夫かしら…」とめちゃくちゃドキドキしてその出番を待っていたものですが(といっても演奏が始まると思いっきり惹き込まれそんなドキドキ感もすぐに忘れるのですが)、さすがに最近は「プロ」としての風格も出てきて、最初からとても安心して演奏を聴くことが出来ました^^

今回はオール・ショパン・プログラム。今年はショパン生誕200年記念イヤーなので、あっちでもこっちでも「ショパン」が取り上げられていますが、ここまでこだわってショパンと向き合っているプログラムはなかなかないんですよね。このあたりもさすがだと思います。そして使われたピアノにもこだわりがあり、ニューヨーク・スタインウェイの中でもヴィンテージ物の1912年製。ショパンに似合う音が出るということでこのピアノを選んだのだそうです。
彼の音楽を聴くと真っ先に「音楽性」とか「表現力」の素晴らしさにはっとさせられることが多かったけれど、今回は見事なまでの「響き」を堪能した2時間でした。

中でも低音はホールの床からじわじわと伝わって響いてくるような厚みというか深みというかそれでいて重たくなく…うまく言葉では表現出来ないのですが、今までどんなピアニストからも聴いたこともないような響きが伝わってきました。
それから倍音の効果!!!!!
「倍音」というのは、「弾いている音」以外の別の高さの音(弾いていない音)の響きが聴こえてくることを言うんですけれど、この効果をすごく使っているなって思いました。今までコンサートに行って倍音を意識して聴いたことなんてなかったのだけれど、嫌でも気付かされるようなそんな音が聴こえてたんですよね。自宅に戻って内藤さんのインタビュー記事を再度読み直すと、やっぱり! 倍音のこだわりが語られていました。
ホールの構造やピアノという楽器を緻密に計算した音の出し方だと思いましたよ
プロの批評家の先生たちは口を揃えたように「彼はピアノを弾いているのではなく、オーケストラを指揮しているようだ。」と言われていますが、まさに実体験した気がしましたよ。ピアノ曲でありながら、様々な色彩がピアノ以上の響きになって音楽が形成されていたのは本当に素晴らしいと思いました。
夫はピアノの演奏会は初めての体験だったので、クラシック音楽も普段あまり聴かない人だし大丈夫かしら…と思っていたのですが、前半が終わった時に「もう終わったの? という感じ」という感想。よかった。ちゃんとクラシック音楽を知らない人にも伝わる音楽なのだな…と確認することに^^;