ちょっとだけ「ワルツ」について書きたくなりました。
きっかけは、「僕のワルツ」という King & Prince さんのシングルCDにそっと添えられている曲で、クラシック音楽とは関係ないところからなのですけれど(笑)。クラシック音楽をやっている人たちにとってみれば、「ワルツ」はよく知っている単語ですが、普段接点のない人たちにとっては、「あまり聞き慣れない単語」だということを知りまして。
クラシック音楽の敷居を低くすることがこのサイトの目的の一つでもあるので、取り上げてみました。(「ちょっとだけ」と書きつつかなりの長文です。本当に書きたかったことは一番最後の章なので、そこまで飛ばして読んでいただいてかまいません(笑)。)
●「ワルツ」って何?
「ワルツ」は、18世紀の末ごろからオーストリアあたりから広まり始めた3拍子の舞曲のことです。男女のパートナーが手をとりあって円を描きながら踊る曲ということから、日本語だと「円舞曲」と書かれたりもします。踊りはちょっとすり足気味(床から離さない)タイプです。
3拍子のリズム感覚って、実は日本人は苦手だと言われることが多いんです。
日本の音楽を辿っていくと、風の音、水の音などの自然の音を表現することが、音楽へと繋がっていった歴史があるので、雅楽とか聞くとわかるのですが、区切りとしての「拍子」なども、もともとなかったんですよね。そんなことも関係しているのか、拍子の感覚、特に「3拍子」という感覚はヨーロッパの人たちに比べて体の中に染みついていないようなんです。
とはいえ、今どきの人たちは生まれた時からいろいろな国の音楽に触れる機会もあったりするので、昔ほどではないと思いますけれどね。
クラシック音楽の多くの作曲家たちも「ワルツ」を作っています。
ヨハン・シュトラウス 2世は「ワルツ王」、そのお父さんのヨハン・シュトラウス(1世)は「ワルツの父」なんて呼ばれていたりします。別記事に書いていますが、「トムとジェリー」の中にも「ワルツ王」という回があって、シュトラウスの曲が多用されています。
ショパン、チャイコフスキー、ブラームス、リスト、ショスタコーヴィチ…。愛に溢れた名曲などもたくさんありますよ。
●ショパンのワルツ
この記事では、そんな中からピアノの詩人と言われているフレデリック・ショパンのワルツをピックアップしてご紹介しましょう。
・ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」
ショパンはワルツを19曲(遺作、ソステヌートを含む)作曲しました。
その中の第1番「華麗なる大円舞曲」は、ショパンのワルツの中で初めて出版された曲です。
本人は「円舞曲」のつもりだったようですが、キラキラした華やかさに満ちた壮大な曲で舞踏会にはうってつけの雰囲気をもっていたことから「円舞曲」の前に「大」(Grande)という文字が出版社によって付けられたようです(笑)。
・ワルツ第6番「小犬のワルツ」
ワルツ第6番は「小犬のワルツ」と呼ばれていて、ショパンに最も影響を与えたかつての恋人ジョルジュ・サンドの飼っていた小犬が、自分の尻尾を追いかけて、くるくる回る様子(=まさに上に記したような「円舞曲」状態!)を見て作曲したというエピソードがある曲です。
かわいい曲というか、目が回りそうというか、落ち着きがないというか(笑)。
でも、細やかで美しく転がっているような、そんな曲です。
ワルツの1番、6番のオススメ盤は、ラン・ランの「The Chopin Album」に収録されている演奏。
ラン・ランのコンサートには何度か足を運んでいますが、本当にこの方はピアノが大好きという感じが体全体から滲み出てくる演奏をされるし、ピアノからも愛されているなと感じます。表情豊かな彼の演奏に感情を揺さぶられてください。「小犬のワルツ」のような可愛い曲は幸せを感じさせてくれます。
・ワルツ第19番(遺作)
そしてもう1曲、ワルツ第19番(イ短調・遺作)。ショパンが亡くなる1〜2年前に作られた曲で、亡くなった後で出版されたことから遺作とされています。ショパンはとあるお家に、夫人やその娘にピアノを教えるために出入りしていて、「献呈」扱いとはされていませんが、彼らのために書かれたとも言われています。
ただ、この曲が作られたのは、ちょうど前出の恋人ジョルジュ・サンドとのお別れもあった頃なので(10年くらいお付き合いされていたそうです)、もしかすると何らかの影響があったかもしれないなぁと私は想像してしまいます。それくらい憂いに溢れた曲なんです。
ショパンの曲の中では、とても音が少ない構成なのですけれど、それでも「ああ、やっぱりショパンの言語がちりばめられているなぁ…」と感じる曲でもあります。
同じ「ワルツ」という括りですが、様々な背景があって、曲の性格もみな違うんです。1曲1曲紐解きながら、聴き込んでいくのもクラシック音楽の醍醐味の一つだし、ショパンのワルツは短めな曲が多いので、初心者の方にも聴きやすくオススメです。
第19番が収録されているオススメCDは、ウラディミール・アシュケナージ盤を挙げておきます。ワルツは14曲収録しているものが多く、19番が収録されているCDって意外と少ないのです。サンソン・フランソワとかディヌ・リパッティとかショパンの名手たちのCDは絶版だったり14曲のみだったりなので、アシュケナージ盤にしました。でも、アシュケナージのショパンは間違いないですからね(笑)!!
そして、最後にご紹介したワルツの第19番ですが…
実は、「King & Prince」さん(以下愛を込めて「キンプリ」さんと省略)が歌っている「バトル・オブ・バトラー!」(アルバム「Made in」に収録されています)という曲のイントロにも使われている曲なんです。
高橋海人さん(「高」の文字は「はしごだか」です。)のパートで、
♪好きだとおっしゃっていた〜ショパンのワルツ19番〜
という歌詞も出てきます。
KingandPrince ARENA TOUR 2022~Made in~<初回限定盤>
2023年3月22日に同タイトルの「アリーナ・ツアー」の DVD、Blu-rayも発売
●[番外編]King & Prince がワルツを歌っている!
クラシック音楽とは離れてしまいますが「ワルツ」なので! もっと身近に「ワルツ」を感じてみましょう。
あ、ちなみに…私は「ティアラ」さん(キンプリさんのファンクラブの方たちの総称?)ではありません。ですが、「Magic Touch」「Namae Oshiete」で心を掴まれ、今は大好きなグループです。
・「僕のワルツ」
さて、そのキンプリさんたちの5人での最後のシングルCDとなってしまう「We are young / Life goes on」の初回限定版Bに「僕のワルツ」という曲が収録されています。
はい! 「ワルツ」です!
初めて耳にした時、どこか懐かしさを感じ、それでいて内面から溢れ出てくる深い感情や切なさがダイレクトに伝わってきました。なにより、言葉を大切にした彼らの歌い方が、よりこの曲を魅力的にしてくれているように思います。
岸 優太さんが歌い始めるのですが、とても丁寧に心をこめた歌いだしで、優しさに包まれていきます。アイス買ってきて欲しい(笑)。
そしてサビ部分で、平野紫耀さんのハスキーヴォイスで
♪君を 愛しているよ 愛しているよ…♪
と、優しさと共に切なさも入り混じって、高みへと連れて行かれます…。深い深い愛ですね。本当に“特別感”があって…泣けてきます。
正直なところ彼らの表現力にも驚かされました。
4月19日リリースの
King & Prince ベストアルバム『 Mr.5 』初回限定盤Aの
“SWEET & MEMORIES” Selected by King & Princeにも
「僕のワルツ」が収録されていることがわかりました!
・ちょっとだけ「おうた」のこと=キンプリさんへのエールのつもり
そして今まで実はずっと書きたかったことがありまして…。クラシック音楽サイトだから、なかなか取り上げられなかったのですが今日は(長くなったついでに)書いちゃいます。
彼らは、ダンスだけではなく、ヴォイトレも頑張ってこられてきたのだなと思っておりまして。身体全体を使った発声の仕方もだんだん板についてきているように思うのです(特に岸さん!)。
音域のこと=実はかなりすごいことやっています!
Aサイドの曲「Life goes on」の2番(?)
♪You’ll be all right …
という歌詞の部分
いきなり「B」(ベー=シ♭)から入り、「As」(アス=ラ♭)でロングトーン(多分)というハードな音域なんですよね。
(「ツキヨミ」でも素敵なロングトーンがありましたね!
*「ツキヨミ」は「A=ラ」(多分)のロングトーンが圧巻です。ぜひ一度 YouTube もご覧になってみてください。もう少しで1億回再生達成しそう♪
→ YouTubeで「ツキヨミ」見る )
→ 3/16追記:1億回再生おめでとう!!!
世界的なテノール歌手だって、ハイC*を歌うために、何日も前から神経を研ぎ澄ませてその時に備えるっていいますからね。あのパヴァロッティでさえ「怖い」って何かの記事で読んだ記憶があります。
*ハイC=ハイ(high)ツェーと読み、高いドの音のこと。
ハイC は、このBの2度上の音。かなりそこに近い音をファルセット(裏声)を使わずに出すっていうのは、失敗するリスクと隣り合わせなことで、ものすごく勇気がいることだと思います。
ただ、さすがに一瞬で「B」をとらえるのは、きついので生放送の歌番組ではややフラットしちゃったり、1番の同じ音域あたりのファルセットは上ずってしまったりということはありましたが、録音では本当に綺麗に出せています。
ちなみに生放送の歌番組で、この音をそれなりに捉えられた時だけ紫耀さんは岸さんに握手を求めに行かれていたように私には思えました(全然違っているかもしれませんが)。
ファルセットも自在に
あと、グループの全員がファルセットをかなり自在に使いこなせている印象を受けますね。これも男声にとっては、意外と大変なことだと思います。
「Namae Oshiete」(アルバム「Re:Sense」に収録されている曲)を初めて聴いた時、どこかから一流のコーラスでも連れてきたのかな? と思ったのですが、本人たちが歌っていたと知った時もまた驚きでした。
おそらくこの辺りからアドリブでオブリガード的にハモりをつけて曲を作っていくんだよっていうベースみたいなものを Babyface 氏から吸収して、磨きをかけてこられたのではないかと推察しています。
神宮寺勇太さんの声もよくとおる綺麗な声で、声量という強みもありますし(ブリッ子キャラに磨きをかけたら外国人にもウケそう(?!))、永瀬廉さんはもともと音域が高くてウィスパー・ヴォイスはもちろん武器になるし(紫耀さんの声との相性が最高)、海人さんも音域が少しずつ広がっていますよね。リズム感も抜群なのが音楽にも生きているし。
オペラ歌手であれば、30代、40代、50代、60代・・・と、どんどん声に艶が出てきて素晴らしい歌声を手に入れていくので、彼らの「のびしろ」は、まだまだ楽しみに溢れているということがわかります!!
伝えるということ
それから、もう一つ。
平野紫耀さんは「We are young」の歌詞カードがボロボロになるまで読み込んでレコーディングに臨まれたということもCDについている特典映像で知りました。「曲」を大切に大切に思う気持ち、作り手へのリスペクト、伝えたいという意志を深く感じます。同じ音楽に携わっている者として感動を覚えました。
素敵な音楽(+ダンス+α=エンターテインメント)を届けてくれる彼らにエールを送りたいと思ってもどうして良いのかわからないので、とりあえず、こうして自分のブログにこっそり書いてみました。最後はワルツからかけ離れてしまい、長々とまとまりもなくなってしまいましたが、お許しくださいね。
彼らのそれぞれの未来への道が明るく照らされますように…
心から祈って(応援して)います。